「焼岳」日帰り登山 2022.9.26
2022年9月26日
俺は長野県と岐阜県にまたがる火山、「焼岳」(標高2455m)へ登った。
連休ではないが、飛び石で休みを得ることができた。
本当なら一泊二日でテント泊登山をしたいところだったが、先日の「にゅう」登山で素晴らしい景色をみることができたこともあり、日帰り登山を再度やろうと心が昂った。
そして今回は、新たに購入したカール・ツァイス40mmのレンズを試してみる良い機会でもあり、楽しみだ。
次の登山地は、火山に行ってみようと考えた。
普通の山とは違う雰囲気があったりするのではないかと思ったのだ。
近くの火山だと、上高地の「焼岳」か南八ヶ岳最北端の「硫黄岳」だ。
どちらも火山らしい燃えるような名前だ。かっこいい。
前回八ヶ岳に登ったため、今回は焼岳に決めた。
自宅から目的地まではGoogle Mapで3時間30分。
休憩を入れれば4~5時間はかかる計算だ。
正直、日帰りで行く場所ではない気がする。
しかし1日しか休みが無い以上、行くしかない。
やるしかねえんだよ。
今回の登山ではヘルメットが必要になる
火山、特に活火山ではいつ噴火活動に入るのか予想できない。
(焼岳は7月に噴火警戒レベルが1になったが、それまではレベル2となり登山が禁止されていた。)
噴火のこともあるが、焼岳は岩も多く、落石にも備える必要がある。
今後も必要となる機会は多いと感じ、近所の店に行きモンベルのアルパインヘルメットを買っておいた。
色はホワイトだ。
真っ白というわけではなく、少しくすんだグレーっぽくも見える感じが気に入った。
スキーにも使えるだろう。
自宅を夜の9時に出発し、早めに到着して車中泊をすることにした。
今回の登山口は長野県松本市安曇、つづら折れを登り切った先、”中の湯温泉”近くにある「新中の湯登山口」だ。
前日の25日、21時に自宅を出発した。
道の駅で休憩を挟みながら運転し続け、午前1時30分過ぎに焼岳登山口駐車場に到着した。
既に数台の車が駐車していたため登山口と駐車スペースはすぐにわかった。
平日の深夜ということもあり、幸いにも登山口の真正面に車を停めることができた。
駐車場のこともあり早く家を出たのだが、それが正解だった。
駐車場というより、道路わきの広くなっている砂利スペースに停めている格好だ。
スペース自体はそんなに広くなく、頑張れば10数台停められる程度である。
いっぱいになったら空いているスペースに路上駐車することになるようだが、あまりやりたくはない。
やはり前泊こそが正義…。
駐車スペースも確保できたため、仮眠することにした。
が、
…………寒すぎる。
寒すぎて眠れない。
仮眠中の車内温度のことまで気が回らなかった。
夜の冷気によって車の床も冷えてきた。
残念ながら日帰り予定のため寝袋はない。
他の車もあるため、エンジンをかけるのも気が引ける。
仕方がないので、持ってきた服とレインウェアをすべて着て、ラゲッジスペースで丸くなって寝た。
それでもかなりの寒さだったが、凍えながらも眠ることはできた。
今度から、車内には寝袋を常用しておこうと誓った。
午前5時。
日が昇り、辺りがにわかに明るくなり始めた。
俺は日の出直前の、微かな薄紫に明るくなる時間帯が好きだ。
普段は寝ている時間に起きて、支度をする。
朝の霞がかった草木のにおい、非日常の冒険のにおいに興奮する。
午前5時30分。
周囲が完全に日に当たり、明るくなる。
登山開始だ。
噴火レベルを告げる看板の脇を抜け、笹の小径を進んでいく。
前半は木々の中、石段、根っこの階段をどんどん歩く。
時折見える、朝日に照らされた淡い山間が美しい。
早朝の山の中は空気が澄んでいる気がして気持ち良い。
足取りも軽い。
段々と焼岳の全貌が見えてきた。
これから登る山の姿が見えるとき、大きな興奮と、少しの絶望が入り混じる。
これから「あれ」を登るのかと、緊張感が増す。
空が、雲が綺麗だ。
登山中の雲は、独特な形が多い気がする。
山だからだろうか。
山と雲のコンビネーションが好きだ。
快晴よりも、雲があった方が山は深みを増す。
山の存在感が際立つ。
周りの景色を堪能した。
こっからが本番だ。
大体の山では、木が生い茂っているあたりまでは"準備運動"である。
森林限界、木が生えない岩場や砂場になったところからが勝負だ。
真の覚悟はここからだ!!!
………岩場キツすぎ。
休憩しながら少しずつ進む。
えっちらおっちら登り、振り返っては軌跡を確かめる。
「確実に登っているぞ…俺はァ…!!」
と己を鼓舞し、姿の変わらぬ山頂を拝み、
「いや、マジで進んでんの?あとどんだけかかんの??進んでなくない???」と脚が鈍る。
マジで永遠に着かねんじゃねーかと思ってしまう。
煙がモクモクしとる。
火山が、生きている。
感動した。
山から立ち上るケムリって良いよね。
カルデラ湖が青緑色(エメラルドグリーン)で超綺麗。
綺麗な景色。
下界では決して味わえない醍醐味。
王の特権。
午前9時。
苦しみながらも山頂へ到達。
行動開始から3時間半。
案外早い時間に山頂まで行けたのは嬉しい。
すんげェーーーー絶景だ。
四方から山々を望むことができる。
数人の登頂者が、頂からの景色を思い思いに眺め佇んでいる。
知らない人間同士だが、連帯感のようなものを感じるこの時間が俺は好きだぜ。
しばらく山頂にて休憩した。
ただ単に登山口から山頂に登るだけならば、結構短時間でたどり着ける。
しかし、俺の目的は、焼岳小屋に売っている登山バッジとTシャツにあった。
俺はここ数年、山へ登ったら登山バッジを買ってコレクションしている。
今日はここまで登山口から山頂を一直線に登ってきた。
では、バッジを売っている山小屋・「焼岳小屋」はどこにあるのか…
焼岳小屋は、山頂から上高地温泉側(登ってきた方とは反対側)へ下った道の先に、ポツンと建っている。
つまり、山頂→焼岳小屋→山頂→中の湯駐車場のルートを辿る必要がある。
山小屋まで下り、更にピストンで来た道を戻らないといけない、超面倒くさいやり方をしなければならないのだ。
しかし俺はどーーーしてもバッジが欲しい。
だって、山小屋でしか手に入らないのだから!!!
登山口の中の湯でもバッジは売っているが、デザインが違うらしい。俺はこだわるぞ。
ということで、焼岳小屋へ下る。
山頂から見下ろすと、眼下に小さく緑色の屋根がポチッと見えた。
…は?あんなとこにあんの?
あそこまで降りるの??は?
と恐ろしくなったが、俺は"覚悟"と"黄金の精神"を併せ持つ”真の漢”なので降りて行った。
時刻は午前9時30分。
俺は真の漢だが、急な岩場を降りるのがすごく苦手で怖いため、両手を使ったり、尻もちをつきながら岩を滑り降りたり、段差をどう降りるか悩んだりしていて、後ろから来た若いカップルや老夫婦や健脚トレランお兄さんにすごい勢いで追い抜かれていった。
下りの岩道はジグザグになっているのだが、俺がやっとの思いで1ターン降る間に、みんな遥か下方にいてびっくりした。は?
午前11時。
下りだけで1時間半かかった。きちい。
本当に大変だった。
登りも大変だが、下りも大変だし、怖い。
しかし、そんなこんなで焼岳小屋へ到着!!!
山小屋はセーブポイント。
とてもホッとする。
焼岳小屋にて、念願のバッジとTシャツを買うことができた。
決死の覚悟での岩山下りで疲れ過ぎたので、怒りのバッジ全購入をキメた。
一つだけじゃ苦労に見合わねえぜ!3種類買った。
ボルケーノTシャツは淡いピンク色にした。なんか火山ぽいので。
一息ついて、また山頂へ登り返す。
登りは下りに比べて簡単だった。
なワケねえだろ!!!バカ!!!
登りはマジでバカ大変だった。死ぬ。
岩を全身を使って這い登り、下ってくる人たちに「本当に大変そうですね……」
なんて声をかけられながら死ぬ気で登った。
登ってくる途中の煙の上がる岩場は、まるで地獄の世界みたいでかっこよかった。
俺の精神と肉体も地獄だった。
時刻は13時00分。
山頂へ舞い戻った。
山頂と山小屋の往復時間、3時間半。
登山口から山頂まで行ける時間じゃねえか!!!バカ!!!
そして、真の下山を開始した。
下山は順調に進めることができた。
下山してるとき、いつも思う。
おれはこんな急な道をこんな距離登ってきたのか――と。すげえね。
そして、途中まで降りて、あれ?まだ??もうちょいだろ?
あれれ???まだ??もう少しかな?あ、まだまだだ。は?
を繰り返す。
基本的に樹林帯がクソ長い。
カラスの鳴き声と車の通行音が聞こえてくると安心する。
駐車場までもう少しの笹の道を通っていると、後ろから来たお兄さんに追い越されながら話しかけられた。
お兄ちゃん「山小屋まで行かれたんですか?」
俺「そうです。超しんどかったです。」
お兄ちゃん「ですよねー。中の湯に宿泊されるんですか?」
俺「いや、このまま日帰りで家まで帰ります。」
お兄ちゃん「ええぇ!?それは、大変ですね。お気をつけて!」
と爽やかに宿に向かっていった。
そこで俺は気が付いた。
もしかしてこのルート、やっぱり日帰りじゃなくて一泊向けのルートだったんじゃ…!?
15時30分、俺は完全下山した。
ミッション・コンプリート。
行動時間、10時間(休憩含む)。
中の湯温泉に入って、諏訪湖の近くの麵屋さくらで期間限定の”排骨麺”(パイコーメン)ってやつを食って、5時間かけて帰った。
家に着いたのは、23時過ぎだった。
限界日帰り火山登山、終わり!!!
SONY a7RⅢ
ZEISS Batis 2/40 CF